いわゆる「サザン」について 感想文

4. 趣味

 今月、8月21日に発売された、著者「小貫信昭」の『いわゆる「サザン」について』を購入し読み終えたので、感想を語りたいと思います。
 サザンオールスターズ、桑田佳祐さん絡みの本は大好物なので、発売されると必ず購入しており、今回も発売日が楽しみでした。今回は電子書籍の手軽さよりも、紙の本ならではの味わいを楽しむために、久しぶりに紙版を購入して読書を楽しみました。じっくりゆっくりと読み進めたので、読み終えるまで8時間くらいかかりました。

 この本の内容は、サザンオールスターズが結成される前から現代に至るまでのエピソードが書かれています。とは言っても、サザンのヴォーカリストである桑田佳祐さんのエピソードが中心に描かれているので、「サザンオールスターズ」+「桑田佳祐のソロ・ワーク」と言った感じです。サザンオールスターズが活動していない期間は結構ありますが、その期間は桑田佳祐さんのソロ活動があるので、隙間なくしっかりと記録が書かれています。
 ただ、ページ数の問題でしょうが、一つひとつのエピソードはこぢんまりとしています。なので、読んでいて少々物足りない印象を受けました。長い長いサザンオールスターズ・桑田佳祐の軌跡をしっかりとした文章で残すなら、バンド結成からメジャーデビューまでの時代、1985年までの時代、1988年の大復活祭からといった節目ごとに、それぞれ単行本にするなどしないと、すべてのことを書くのは難しいでしょうね。
 それでも、私がサザンのアルバムの中で一番好きな「KAMAKURA」についてのエピソードが、第3章という単独の章で書かれていたので、ここに関してはとても満足です。この章を読んで、この2枚組の大作アルバムの制作コンセプトを知ることができました。やはり、桑田佳祐さんとしては、このアルバムはビートルズで言うところの「ホワイト・アルバム」を目指していたんだなと、改めて感じました。
 その他の初期のアルバムやシングルの制作コンセプトも、とても興味深く読むことができました。

 この本は、ただ単にサザンオールスターズ・桑田佳祐の輝かしい軌跡が書かれているだけではなく、暗部についても書かれています。とくに、一時期、桑田佳祐さんがアルコール依存症の一歩手前までになっていたなんて、結構な驚きでした。それと、1980年後半にコカ・コーラ企画でアメリカのデュオグループ「ダリル・ホール&ジョン・オーツ」とのコラボレーションが精神的にキツかったというのも初耳でした。音楽スーパーマンの桑田さんであっても、完全無欠ではなかったということですね。
 ただ、私のように古いサザンファンなら誰しもが知りたい暗部である、サザンのギタリストだった大森隆志さんのサザン脱退の真相についてがまったく触れられていないのが残念でした。やはり、この件に関しては、アンタッチャブルなんでしょうかね。やはり、本当の暗部的な事柄は避けられているようなので面白みに欠けます。もう少し明暗のコントラストを強めた方が、本書をもっと楽しめたかもしれません。

 私は、サザンオールスターズが正式メンバーのバンド・サウンドとして成り立っていたのは、1985年9月に発売されたアルバム「KAMAKURA」までだと思っていましたが、この本を読み終えて、やはりそうだったと確信しました。1988年にサザンはシングル「みんなのうた」で活動再開し、その後にアルバム「Southern All Stars」を発売しますが、この頃には小林武史をプロデューサとして招いたり、ギターを小倉博和に弾かせていたりで、音楽的には向上したのでしょうけど、サザンらしい音色は、これ以後消えてしまったように思えます。これはネガティブな情報ですが、サザンの転換期が明確にわかったので、私的には納得できる部分でした。

 本書の1番の肝は、本書の巻末に書かれた桑田佳祐さんのサザンオールスターズに対する想いです。そこには、サザンオールスターズが新曲を出し続ける動機が書かれていますが、まさにこれが、桑田さんの飾りのない本音であると思いました。(何が書かれているかは本書を購入して読んでからのお楽しみ)そして、これを読んだサザン・ファンは、ますますサザンオールスターズを愛するようになると思います。私も、さらにサザンが愛しくなりました。
 最後に、サザンオールスターズ、そして桑田佳祐さんの長き46年間の軌跡に触れたい方は、ぜひ本書を手にしてみてください。あなたなりの新たなサザンを発見できるかもしれません。

 かしこ

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