サザンの『THANK YOU SO MUCH』を聴いて 〜どんどん聴きたくなるアルバムだ〜

4. 趣味

 サザンオールスターズの10年ぶりのスタジオアルバム『THANK YOU SO MUCH』を聴いたので、個人的な感想を述べたいと思います。サザンオールスターズが新しいアルバムを製作中という情報を得たのが昨年の夏くらいでしたかね、たしか。初めは年内に出るのだろうかと期待していたが、どうやら年明けになりそうとなり、発売日は2025年3月19日と正式発表され、ようやくその日を迎えました。毎回、サザンのニューアルバムが発売されるというのは、私の中では大きな事件です。今回は、実に10年ぶりのオリジナルアルバムですから、かなり待たされた感じがしたが、無事に発売日を迎えられて大変嬉しく思いました。

サザンはもう46歳ですから

 ただ、今回のニューアルバムを迎えるにあたって、以前ほどの期待は持ちませんでした。サザンは今も現役感がある日本を代表するバンドではあるが、やはり、昔のような曲はもう出せないと思っているからです。2005年に発売された2枚組のアルバム『キラーストリート』はとてもエネルギッシュな内容のアルバムだと思う反面、サザンとしての曲を作る作業に力を振り絞って、最後の一滴にまで出し切ったような印象があります。その後に出した2015年発売の『葡萄』は、個人的にはサザンのアルバムの中では嫌いなアルバムです。サザンの良さは、洋楽のリズムやメロディーに、独特の日本語歌詞を載せて来るところにあると思うのだが、このアルバムはなんだか歌詞が先行して、そのあとに楽器隊がついて行ってるような感覚があり、今までのサザンの技法と反しているような感じがあります。なので、大好きなサザンオールスターズではありますが、「そろそろ終わりかな」と思うようになりました。ポール・マッカートニーであれボブ・ディランであれ、全盛期がずっと続くということはなく、年齢とともに楽曲も衰えてきたのですから、天才桑田佳祐さんも例外なく衰えるのです。こればっかしはしょうがないことです。

薄味な印象

 そんなことで、今回の『THANK YOU SO MUCH』は、力まずに、どれどれという軽い気持ちで聴いてみました。

 とりあえず1回通して聴いた率直な感想は、「面白みがない」「サザンらしさがない」という感想でした。今回の『THANK YOU SO MUCH』は14曲入りで収録時間は1時間越えの大作ではありますが、このうちの6曲はすでにシングルとして発表されている既出曲なので、実質の新曲は8曲だけです。私としては、シングルの6曲よりも良い曲が当然に新曲8曲のなかにあるだろうと思っていたが、シングルを超える良曲は、私の感性で全く感じられなかった。それ故に、なんか肩透かしを喰らった感じもして、余計に面白みが感じられなかった。先行シングルの「恋のブギウギナイト」と「ジャンヌ・ダルクによろしく」には、久しぶりに洋楽に向き合うサザンの曲だったので、前回のアルバム『葡萄』のような和のテイストよりではなく、洋楽寄りのサザンが聴けるかもしれないという期待もあったのだが、決してそんなこともなく、アルバムアートも日本人形であることから、やはり洋よりも和の印象が強い。そういう意味でも、少々がっかりしたのが、最初の印象です。

 しかし、数回聴いているうちに、つまらないアルバムなどという印象は消え去った。確かに今回のアルバムには、アルバムを印象付けるようなとんがった曲は存在しないが、アルバム全体を通して何とも言えない安心感があることに気づいた。過去のサザンのアルバムを思い起こしても、今回のアルバムのようなのは無い。他の人のレビューを読むと、昔のサザンを彷彿とさせるという意見もあるようだが、私はそうだとは思わない。たしかに、「悲しみはブギの彼方に」と「ミツコとカンジ」にはデビューアルバムの『熱い胸騒ぎ』のテイストを強く感じるが、そのような曲はこの2曲のみだ。だからアルバム全体からは昔のサザンの匂いは感じない。かと言って、近年のサザンらしい楽曲かというと、そんなこともない。そう、この『THANK YOU SO MUCH』から感じられるのは、等身大の今のサザンオールスターズであると思う。けして現代の売れ筋ポップ路線ではなく、過去を憂うような内向き志向でもない。完全に新しい今のサザンオールスターズのニューアルバムなのだ。

 サザンオールスターズの過去のアルバムは、幕の内弁当と例えられている。ロックもあれば純和風バラードもあり、時にはジャズや民謡まである。それゆえに、アルバムとしての纏まりはあまりなかったと思うが、今回の『THANK YOU SO MUCH』は実にコンセプト・アルバムとして完成していると思う。纏まりのあるアルバム感覚としては、初期の頃のアルバムに通じるものがあるが、今作はアルバム全体を通しての曲の起伏がもっともないように感じる。なので全体を通して聴き疲れすることなく、最後まですんなり聴ける。こんなサザンのアルバムは初めてだ。

 前作を越えたとか、新しいサザンサウンドだとか、昔っぽい曲だとか、そんな風に比較しながら聴くのではなく、この令和7年現在のサザンオールスターズの等身大のアルバムとして楽しく聴き込んでいきたい。そんなアルバムだと思う。

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