天職努力 〜自分の仕事をやり遂げることが宗教です〜

1. 解脱の教え

 七日正月も過ぎ、今日からほとんどの会社が動き出したと思います。不動産業の私の勤め先では、今日が仕事始めです。例年ですと、一週間くらいの長期連休のあとは社会復帰できるかと少々不安になりますが、今回はすんなりと業務に戻れました。業務開始早々、いきなり管理物件で少々厄介なクレームが入ったので、正月気分も一気に消失して、お仕事モードになった感じです。


天職とは

 「天職」というと、どんな印象を持つでしょうか? 神仏から与えられた使命というと、やや堅苦しく感じますが、自分の人生において果たすべき本来の仕事のことを指すのだと思います。これは、まさに十人十色で、それぞれの生まれ持った性格や性質にあった職業であるといえます。人それぞれに特色があり、その特色を存分に活かせる職業こそが、まさにその人にとっての「天職」なんだと思います。


進路が見えない

 高校生や大学生、あるいは専門学生であっても、自分の進むべき仕事が見えてこない若者はたくさんいるようです。現代の日本の経済状況は順風満帆とはいえないので、どんな職業を選んで、どの会社に入社するのが自分にとってベストなのか、決めかねているという人が多いと感じます。もちろん、学校を卒業して初めて社会に出るのですから、就職先に対して慎重になることは当然です。しかし、「自分はこの職に就きたい!」「この会社に憧れている」といった仕事に対する情熱をつかめないのは困ったものです。


すぐに退職する人も

 就職して、「この企業に就職できてよかった」「私にはこの仕事は向いている」と前向きな気持ちを持てればいいのですが、残念ながら、みんながそうはいきません。「この会社は失敗だった」「私には不向きであった」という後悔をしてしまうケースも多々あるでしょう。中には入社一年持たずに辞めてしまう人もいるようです。給与の良し悪しや、残業の多さ、または人間関係が原因ということもあるでしょうが、いちばんの原因は、希望していた職務内容と違い、やる気をなくしてしまったというのが、ほとんどなのではないでしょうか。なんだか、もったいない気がします。


転職万歳文化

 それと現代社会では、転職することが推奨されている側面があります。これは、欧米文化に倣ったものですね。欧米では、就職しても自分の求める職務でなかった場合や、この職場では自分のスキルを上げることができないなどの理由で転職するのが、当たり前の文化です(もちろん、選べるだけの立場が必要ですが)。かつての日本文化では、ある企業に就職したら定年退職するまでその企業に勤めるといった保守的な概念がありました。しかし、現代では、欧米のように転職することは良いことだという風潮になりつつあります。たしかに、もっと自分のスキルを高める、あるいは、自分の求める職務に就き、己の特色を大いに生かし会社に貢献するということ自体は素晴らしい考えだと思います。ただし、転職、転職、また転職を繰り返す本当の理由が、ただ単に辛いことから逃げているだけの自己欺瞞になってはいけません。そんなのは『天職努力』ではなく、「転職努力」です。

自分の好きなことをやればいい

 では、「天職」とは何か? その答えは、『自分の好きなことをやる』ということだと思います。そんな無責任なことと思われる方もいるかもしれませんが、あながち間違いだとは思いません。なぜなら、好きなことでなければ、必ずストレスや不満が湧くからです。本当の天職であるならば、そこにそれらの負の要素は存在しないのです。もちろん、好きなことをやっていても躓くことはありますし、悩みが生じることもあるでしょう。例えば、歌手の桑田佳祐さんでさえも、このようなことがあるそうです。桑田さんはポップミュージックが大好きで、サザンオールスターズというバンドを組んでプロデビューしました。桑田さんにとって、ミュージシャンは天職であると誰もが認めることができると思いますが、やはり、そこには人に言えない苦悩が多々あったと思います。スイスイ泳ぐように、次から次へと名曲が生まれるわけはないのです。人知れず努力をした結果、今があるのだと思います。しかし、桑田さんは間違いなく音楽という好きなことを純粋にやってきた人です。

天職努力は宗教です

 特に若い人には、とにかく好きなことを見つけてもらいたいのです。そして、その好きなことを自分の天職としてもらいたいのです。そして、成功するために努力を惜しまないでもらいたいのです。天職を全うするために努力する姿は、まさに宗教であるのです。私の学んでいる解脱会の会長先生である解脱金剛さまは、戦時中、戦後に解脱会会員に産業や職業についてご指導をなされました。「あなたはこれをやりなさい」「今の仕事はやめて、こうしなさい」等々、会員さんそれぞれに適した天職をご指導なされていたのです。そして解脱金剛様は「天職努力することは宗教である」という意味のお言葉を残されました。神仏に祈るばかりが宗教ではないのです。自分の天命、自分の特色を生かし、世のため人のために努力精進することこそが宗教の実践業なのだと思います。なので、自分の受け持った仕事をやり遂げることは、実に尊いことなのです。

かしこ

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