久しぶりに読書感想文を書きます。読書は常にしており、それなりの冊数を読んでいるのだが、ブログに感想を書こうと思うほどの衝動には、なかなか至らないというのが真実だ。そんな中、今回読んだ『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者である三宅香帆さんは、最近私のお気に入りのYouTuberであり、その中でこの本がよく紹介されていたので、読んでみることにした。この本は累計発行部数が30万部を超え、「新書大賞2025」も受賞するなどベストセラーになっているので、今売れているホットな本ということは間違いない。読む前からブログに感想を綴ろうと決めていた。
本が読めない理由は疲れるから
この本を手にする人は、読書好きの人が大半だと思う。もっと本を読みたいが、仕事に追われてなかなか本が読めないという方が選んで読んでいると思う。つまり、こういう方が30万人以上いるということだと思う。私も読書好きではあるが、幸いにして自宅と職場が近いので、一般的なサラリーマンと違い通勤時間というものがないに等しい。だから時間が取れるので、読書をする時間はある方だと思う。しかし、大抵の方はそうはいかないだろう。仕事時間には通勤時間も必然的に加わっているので、本当に時間がない。その中で読書時間をつくるのは決して容易なことではない。通勤列車で読めばいいではないかと思われるだろうが、仕事で疲れているのに、涼しい顔して活字を追うのは、そうそうできることではない。早起きして読めばいいとか、帰宅したらテレビやネットを見る時間を削って読めばいいなどと言うのは、現実をわかっていない人の戯言だ。疲れている時に、ボーッと適当なYouTubeを見ていることが、どれだけ癒されることか。休日に家でゴロゴロしながら、だらしなくゲームをプレイしていることが、どれだけ楽しいことか。これは普段、仕事をやり抜いている人だけが味わえる特権だと思う。知識吸収のために、あるいは文学作品であっても、活字を追うということは疲労する行為だ。だから、働いている人はなかなか本が読めないと私は思う。
仕事は読書の為ならず
感想を書く前に持論を述べてしまったが、この本では、全身全霊で仕事にコミットメントをするから本が読めなくなると書かれている。つまり、日本人の労働時間は長すぎであり、さらには仕事に全精力を注ぎすぎであると書かれている。では、どうすれば本を読めるようになるかという問題について、その根本である「仕事に全身全霊」という信仰を捨てて、半身にすれば良いという結論を出している。つまりは、仕事は適当に手を抜いて、本を読む時間やエネルギーを増やしなさいということだ。
がっかりである
読み終わって結論に対して嫌悪感を持ち、そしてがっかりしたというのが正直な感想だ。結局は落とし所はそこかよ、と思った。この結論は、乱暴に言えば、自分の読書という楽しみを充実させるライフを築くために、その邪魔をしている仕事を放棄してしまえということだ。たしかに、仕事への熱意を減らせば、その分だけ心に余裕が生まれるので、自分の楽しみに没頭できる時間も生まれるかもしれない。しかし、読書とは言ってみれば趣味であると思う。たしかに、本を読めばさまざまな情報と知識が増えるので、それらは人生の上での武器となり得るが、所詮は趣味でしかない。映画やアニメ、ゲームを楽しむのと同じで、趣味のひとつでしかない。これら趣味を充実させるために仕事を放棄するのは、全くもって迷走しているとしか思えない。大切な仕事からよそ見して、趣味に走るのは現実逃避でないとしたら何なんだろう? 好きなことを一番に考えて、嫌なことには目を瞑るのは、ただのわがままでしかないのではないか。
最近はいろんな啓発本を読んでも、「頑張り過ぎない」、「努力は不必要」というキーワードが目につくが、この『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』も同じテーマであったことにがっかりである。でも、今はこのキーワードがヒット作を生むトレンドなのだろう。しかたない。
仕事しながらでも読書は趣味として成り立つよ
平日は家に帰ったら風呂入って酒飲んで寝てしまい、ほとんど自分の時間を取れないとしても、現代の職場は週休二日制がほとんどだ。週末に読書という趣味を楽しめる時間は十分にあるではないか。もちろん、週一しか休めない職場環境もあるだろうし、そうでなくても副業をしていれば、完全なる休日がなかなか取れない人もいるだろう。しかし、読書が大好きならば、時間を作るはずだと思う。なにも月に4冊も5冊も読む必要はない。多読しなければ読書が趣味とは言えないという邪教は捨てた方が良い。本当に忙しくて時間がないといっても、1日10ページぐらいならば読めると思う。であれば、1ヶ月に1冊は読破できるはずだ。読書好きは、このペースでは物足らないと思うだろうが、仕事に追われる日々である以上仕方のないことだ。どんな人にでも、1日は24時間しかないから、いかにその限られた時間の中で自分の大好きな趣味を組み込んでいくかは、その人々々の工夫が必要になる。むしろ、読書ならば、自分が本当に読みたい本だけを選べる眼力が身につくかもしれない。無駄な本ばかりを読むよりも、ずっと有意義である。
なんだか批判ばかりの感想文になってしまったが、これはあくまで私個人の感想なので、仕方がない。おべっかの感想など書いてもしようがない。しかし、「本にはノイズがあり、そのノイズとは自分が求めていない知識である」という考え方には共感できた。確かにその通りであり、だからこそ本は面白いのだと思う。これからも、できるだけいろんな本を読んでいこうと思った。それだけでも、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んで良かった。
かしこ
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