「霧のレクイエム」の感想

4. 趣味

 今回は阿刀田高さんの「霧のレクイエム」を読んだので感想を語りたいと思います。

私は阿刀田高さんの大ファンですが、阿刀田さんはショートショートの名手ですから、これまで読んできた本はすべて短編小説でした。ですから今回が初の長編小説となります。
 長編となると短編とは文章の表現のしかたが変わるのかと思って読み進めていましたが、所々に阿刀田さんらしい言い回しがあり、これは間違いなく阿刀田さんの小説だと安心して読み続けられました。特に男女の情欲の表現はいつも通りでした。学生時代は興奮して読んだものですな😃

 主人公、仁科洋子は軽井沢で本堂と名乗る男と出会い、やがて二人は恋に落ちる。だが、本堂は洋子に奇妙な交換条件を突きつける‥‥ こんな感じのストーリーは進んでいきます。
読んでいて久しぶりに「面白い!」と思いながら読み進める内容でした。どういう結末を迎えるのか、あれこれと自分で推理しながら読んだのも久しぶりでした。一つの事実にもう一つの事実が重なり、さらにもう一つの事実が浮かび上がる‥‥ こう書くと少し複雑に聞こえるかもしれませんが、そんなに難しい展開ではないです。余計な描写がほとんどないので、ストーリーを追うことに没頭できます。
 そしてラストは‥‥ これは言えません。これ書いちゃったらとんでもないネタバレになりますので。
そこはやはり阿刀田さんの作品ですか、なんとも心残りするような終わり方です。また、すっきりした結末ではないので、読んだ後、あれこれと考察させられました。そして、自分なりに答えを導き出しましたが、正解なのかどうか、う〜ん🧐
私自身はこの終わり方がとても気に入りました。この作品のタイトルが身に染みるラストだということだけ言っておきましょう。

 この作品、はっきり言って名作だと思います。この「霧のレクイエム」は1988年に初版発行されていますから、かなり昔の作品になりますが色褪せない素晴らしいミステリー作品だと思います。そして、短編ブラックユーモアの名手が、こんなに入り組んで計算された長編ミステリーを書いていたことに驚愕しました。今度また別の長編小説を読んでみようと思います。

かしこ

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