「松田聖子の誕生」感想文

4. 趣味

 若松宗雄さんの「松田聖子の誕生」を読んだので、今回はこの本の感想文を書きたいと思います。

私は松田聖子のファンだが、全盛期の80年代に夢中になっていたわけではない。当時、松田聖子のアルバムはが好きでよく聴いていたが、殆どレンタルか人から借りたレコード・CDからカセットテープに録音して、それで聴いていたにすぎない。自分で買ったレコードといえばシングルの「Rock’n Rouge」くらいなものだ。
 しかし、それから40年経った今でも松田聖子のアルバムは時折聴いている。
古さを感じさせない楽曲達は、昨今流行りのシティーポップとも少し違う、松田聖子ならではのポップミュージックワールドだと思う。聴いていてとても楽しい気分になる。それはきっと、松田聖子の楽曲は「夏」だからだと思う。それも昨今の病気になりそうな暑い夏ではなく、照りつける太陽の下で海水浴をしている楽しくて暑い夏だ。
私が10代の頃に海に行くときは、いつも松田聖子のカセットテープを持って行っていたと思う。それをウォークマンで聴いたりカーステレオで聴いていた記憶がある。だから今でも、松田聖子を聞くと楽しかった夏の日々が甦る。

 この本を読んで初めて知った事がたくさんあった。
まず、聖子さんの家柄にに軽く驚いた。お父さんは厳格な公務員であり、親戚さんは医者であること等々。失礼ながら、もっと庶民的な家庭の人だと思っていた。なぜなら昔、松田聖子はヤンキーだったとか暴走族だったとかいう悪い噂があったからだ。この本を読んだ限り、それらは単なる嫌がらせのデマだったと確信した。
 私の記憶では、松田聖子はデビューしてからすぐ売れっ子になって、難なくアイドルスターになっていたと思っていたが、この本にはデビューに漕ぎ着けるまでには大変な苦労があったということが書かれている。特に、父親がもの凄く厳格な人柄で、歌手になる事をなかなか許してもらえず、許しを得るまで大変であったということは、テレビに笑顔で映っている松田聖子からは想像できなかった。
「裸足の季節」でデビューして、徐々にアイドル歌手として加速していき、アイドル歌手の域を超えたポップシンガーになって行くその道程は、松田聖子の愛らしいルックスと声質や声量が素晴らしかったことは当然だが、やはり、強力な作詞家・作曲家・そしてプロデューサーに支えられていたのが成功した大きな要因だという事をこの本で再確認できた。
 そして、歌手として成功した一番の要因は「運」だと思う。
どんなに歌が上手くても、どんなに良い曲でも、必ずしも成功するとは限らないのが芸能の世界だと思う。輝かしいスターになる人が必ず持ち合わせているこの「運」が、漏れず松田聖子にもあったのだといことを深く感じ取れた。
 この本の筆者である若松宗雄さんは、松田聖子がデビューしてから7年間プロデュースしていたようで、その後の松田聖子の活動はこの本では語られていない。というか、デビュー前後の話が中心に語られていて、デビューしてからの数年後のエピソードも内容的にはかなり薄い。この辺は、80年代の松田聖子の様々なことを知りたい人には物足らない本かもしれない。ただ、この本のタイトルとサブタイトルの「すごい声を見つけてしまった」の熱量は十二分に感じられると思う。そして、この本を読み終えたら、きっと、松田聖子の全盛期の楽曲を聴きたくなるはずだ。だから、この本はこれでいいのだと思う。

かしこ

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